履歴書からみる日本の社会
最近、電車の中や街を歩いていると、黒いスーツに身を固めた就活生をみかけます。大学生の「夏の風物詩」とも言っても過言ではない就職活動。20代前半の学生たちが、暑い中スーツを着て日々奮闘しています。本当にお疲れ様です。
その様子を見ていたら、ふと疑問に思うことがありました。
それは、「みな同じ色のスーツを着て面接に行ってる」ってことでした。
会社から黒いスーツを着てきてくださいと言われていれば別ですが、社会の慣習として、就活=リクルートスーツを着ないといけないという考えが “まだ”「常識」となっています。
もちろん、礼儀として着て行くという人もいるかもしれませんが、最近では、面接にスーツでこなくていいいとわざわざ言う会社もあるくらいですから、どれぐらいスーツにとらわれているかがわかります。
僕も、留学から帰国して日本で就職活動をした際、特に何も気にせずグレーのスーツに赤いネクタイで面接に行きました。
そしたら、周りの人全員がほぼ同じ黒色のスーツと地味なネクタイでとても驚きました。思わず「全体主義?」とつっこんでしまうくらい、黒一色に染まった待合室を見て鳥肌が立ったのを覚えています。(まじで少し怖かった)
余談ですが、日本の電車に乗っていると、私服でもスーツでも地味な色の服を着ている人が多く、カラフルな洋服を着た人が少ないように思えます。社会背景と何か関係がある気がします。
また、ある時は面接にスーツで行かなかったこともあります。(笑)
「どれだけひねくれてるんだ」と思われるかもしれませんが、その日は2つ面接があって、後半の面接では普段着で来てくださいと言われてしまい、結局、最初の面接には襟付きのシャツとジャケット、そして革靴で望みました。(なんか中途半端 笑)。
そしたら、面接官の人に「スーツを着ていなことに驚いた。採用されるためにも着てくるべき」と言われました。
やはり、皆と「同じこと」をするのが求められる社会ですので、「型」にはまらないとスタートラインに立つのは難しいんだなと実感しました。
履歴書はどれも同じ?
それでは、今日の本題、履歴書についてです。履歴書は就職活動で欠かせないもので、誰もが一度は書いたことがあると思います。
しかし、この履歴書、日本と海外では書方に違いがあること、みなさん知っていましたか?
実は、この履歴書の書き方の違いから、採用における価値観や社会の背景を垣間見ることができます。
僕はイギリスに滞在中、英語で履歴書を何枚も書きました。その時、日本との履歴書の書き方で異なる点・驚いた点をいくつか紹介します。
1つ目は、履歴書の「枠」です。
日本の履歴書は、あらかじめどこに何を書くのかが細かく指定されていて、それが線で囲まれています。フォーマットは基本的にみな同じものを使います。その一方で、イギリスの履歴書は線で囲まれた「枠」がありません。自分で何をどこに書くのか、白黒かカラーか、用紙のレイアウトまで自分で考えます。
この2種類の履歴書の書き方から感じたのは、なるべく「同一化」しょうとする履歴書と、「枠」にとらわれない比較的個人の裁量を残した履歴書です。
どっちがいいかは分かれますが、せっかく自分をアピールする履歴書なので、枠にとらわれずに書いてもいいと思います。最終的にその人を判断するのは企業側なので。
2つ目は、顔写真と年齢の記入です。
日本の履歴書には写真と年齢を記入する枠があります。イギリスでは基本的に顔写真を求められることはありませんし、生年月日は書きますが、年齢は書きません。外見や年齢で先入観を抱くと偏見につながるからです。
ただ年齢記入で不思議に思ったのは、企業の募集要項をみると、年齢制限と卒業時期があることです。自分もこのせいでかなり苦労しました。例えば、海外の大学の卒業時期は日本と違うので、採用試験を受ける際に、新卒として試験を受けさせてくれない企業もありました(今では少し改善してると思いますが)。
これは、応募できる人を極端に制限している点で、明らかな差別に当たると僕は思います。ちなみにイギリスでは年齢制限をしている企業を僕は見たこがありません。資格や経験があれば、応募できるようなフェアな機会があることはとても重要です。
そもそも、学ぶタイミングや就職するタイミングは人それぞれなのに、日本の企業はなぜ入社時期や年齢制限してしまうのでしょうか。そのせいで、いい人材をたくさん逃していますね。もったいない!
大学を卒業後、やりたいことがあっても、こうした条件のために、20代前半で就職をやむなくする人が多くなり、結果的に同じ年代の同じような若者が大量に就職することになります。
これだけ多様な人材が求められている世の中で、企業自ら人材の多様性を制限しているのをみると、この先の発展は少し難しいかもしれません。
3つめは、職歴や学歴の書く順番です。
日本の履歴書は、出来事を古い順に書くケースが多いかもしれません。最近では新しい順に書くケースも増えましたが。一方イギリスの履歴書では、出来事を新しい順に書きます。
「過去」か「今」のどちらを基準に書くのがいいかは正直わかりません。ただ、履歴書の目的は応募者がどんな人物かを把握するためにあります。どんな過去を歩んできたとしても、その人の「今」をしっかり理解してあげることが採用の際には大事だと思います。
思ったこと
履歴書の書き方から日本の社会を少し垣間見ることができました。社会の慣習や「枠」を重視するのか。それとも個人の自由や多様性に焦点を置くのか。履歴書は誰のためにあり、その本来の目的はどうあるべきか。
今後、多様な生き方がより増えていく中で、履歴書の書き方もその状況に合ったものに変えていくべきだと思います。そして、何より企業は、年齢制限や卒業時期などの制限をなくす努力をしてほしいと思います。一人ひとりの人生は異なるのが当たり前なんですから。
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